2.北欧の歴史(郵便は400年!)

 日本は文明開化により明治4年に郵便制度と同時に切手の発行が始まりましたが、郵便の本家のヨーロッパは遥かに長い歴史を持っています。1618年からヨーロッパのほとんどの国を巻き込む30年戦争が始まりました。キリスト新教国家のスウェーデンは1620年になんとドイツ国内に多くの郵便局を築き軍事郵便をスタートさせました。戦争の情報は郵便で運ばれる時代であったからです。

 その後、民間の人も差し出せる郵便制度が始まりました。中央ヨーロッパに近いデンマークが1624年のクリスマスイブにスタートしたのに続き、スウェーデンは1636年、フィンランドやエストニア(これらは旧スウェーデン領)は1638年、ノルウェー(デンマークの支配下)1647年でした。いずれも日本では江戸初期にあたります。僻地の大西洋の北に位置するアイスランド(デンマーク領)は少し遅れて1776年です。グリーンランドは1774年です。

1648年に結ばれた国際条約であるウェストファリア条約により,その後約150年間の領土の大枠が決められました。北欧ではスウェーデンが一人勝ちした形になりました。1661年のイギリス、1672年のフランスに続き、1686年に世界で3番目に古い消印がスウェーデンで登場しました。これは一般の郵便を表す“B”と公用無料郵便を表す“F”の2種のイニシャルを表す消印でした。

 

       スウェーデン“B”印付き                          “B”印の印果

         オランダ宛の手紙1686年(筆者蔵)

19世紀はナポレオンによって幕開けし、北欧ではこの騒乱により現在に至る大枠の領土等が決まりました。スウェーデンは最初反ナポレオンでフランスと戦いましたが、フランスはロシアと和睦しスウェーデンを攻めたため、500年以上支配したフィンランドを割譲しました。世継ぎが絶えたスウェーデン王国はフィンランドを取り戻すため、ナポレオン側に立ち、彼の部下のベルナドレッドを迎えカール14世としました。しかし、カール14世はナポレオンに反旗を翻し、当時フランス側のデンマークを攻撃しました。最終的にナポレオンは負けるわけですが、この代償に1814年スウェーデンはデンマークからノルウェーを得ました。この後,ノルウェーは切手を発行しますが、そこに描かれている国王はスウェーデン国王です。それまでノルウェー領であったグリーンランド、アイスランド、フェロー諸島はデンマーク領となりました。ノルウェーの独立は1905年となります。また、フィンランドがロシアから独立するのは共産革命が契機となった、1917年までかかりました。

このような混乱のなかで、郵便事務の効率化のため、消印が本格的に北欧各国で用いられるようになりました。この頃、郵便料金は受取人払いですが、受け取り拒否した場合、中身を空けて差出人を特定する必要がありました。このため、どこから来た郵便かを判別できるように18世紀末にはドイツのハンブルグのトルン・ウント・タキシスの郵便局で国名印が用いられ始めました。これが、北欧各国にも波及し、フィンランドでは1812年、スウェーデンでは1819年、デンマークでは1821年に地名のみの消印が使用されるようになりました。日付が入れられたのは1830年からです。

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